ご挨拶

 このたび第18回膵癌術前治療研究会の当番世話人を拝命いたしました。鹿児島大学消化器外科学教室(旧第一外科)が本研究会を開催させていただくのは新地洋之先生が当番世話人を務めた2014年第9回以来10年ぶりとなります。短い間に2回も本会を開催させていただくことは鹿児島大学にとりまして大変光栄なことで、海野倫明代表世話人をはじめ役員の皆様のご支援に心より御礼申し上げます。

 本会は2010年に第1回研究会が開催されましたが、当時は術前治療への理解が低かったと聞いております。恥ずかしながら私自身も膵癌術前治療の後発組で、術前治療研究会発足時から参加していた鹿児島大学に異動してから本格的に勉強させていただきました。特に最近では薬物療法の進歩と積極的な臨床試験の実施により多くのエビデンスが構築されてきており、術前治療は膵癌診療ガイドラインで推奨されるまでになりました。治療法も薬物、放射線、免疫療法など多岐に渡り、今後さらに発展していく領域です。

 今回の研究会のテーマは「命のリレーの第一走者」とさせていただきました。膵癌を含め多くの消化器癌治療は術前治療、手術、術後治療がリレー式に繋がって、根治を得る確率が上がっていきます。その中で術前治療はリレーの第一走者で、極めて重要な役割を担います。術前治療で著効が得られれば、その後の治療へ向けて貯金ができ、手術、術後治療を行っていくうえで有利となりますが、1st lineでつまずいても、2nd lineで粘って、手術、術後治療で逆転することも可能なほど治療選択肢が増え、治療効果も上がってまいりました。一方、第一走者にどのようなレジメンを持ってくるか、あるいは放射線治療を主体に考えるか、まだ統一されていない一面があるのも事実です。さらに栄養支持療法や胆道ドレナージ術、メンタルケアなども術前治療に大きく影響を与える要素です。こういった点にも注目したセッション構成を企画したいと考えております。

 10月の鹿児島は台風シーズンも過ぎ、大変過ごしやすい時期になります。鹿児島はユネスコ世界自然遺産と文化遺産の両者が揃う世界的にも珍しい地域で、雄大な桜島などの豊かな大自然や、薩摩藩の時代から先進的な文化を身近に感じることができます。また食べ物や焼酎も大変美味しく、特に牛、豚、鶏、鰻、ハマチはふるさと納税でも大人気の品で、研究会の前後で是非ご賞味いただければと思います。鹿児島大学消化器外科学教室員一同、皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。


第18回膵癌術前治療研究会 当番世話人
鹿児島大学 消化器外科 大塚隆生